作品概要・あらすじ
平凡な高校生・「中村誠」は、ある日友人グループ達とゲームに興じていた。
それは、ジェンガを崩した者が自身の“秘密”を打ち明けなければならないというルールで、誠の中学時代遅れからの憧れの女子、「山口遥」への質問は“好きな人の名前は?”というもの。
彼女が誰の名前を挙げるのか、気になってしょうがない誠であったが、遥の口から何と誠の名前が。
誠も周囲の友人達も信じられない様子であったが、中学時代から気になる存在だったようで、実は誠と遥は既に両想いだったのだ!。
しかし、彼女は「城北高校」・「城南高校」の各番長のお気に入りであり、謂わば爆弾のような女子でもあるのだ。
胸が高鳴る中でもこのリスクを把握していた誠であったが、何者かのリークによって直ぐにバレてしまい、城北高校のヤンキー達にボコられてしまうハメに。
誠はリーダー格の「吉田俊」に啖呵を切り抵抗、その際に橋から落下し、寒空の川底へと沈んでいってしまう…。
遥からの告白を反芻しながら死を覚悟する誠であったが、川底に光る立方体“ヘラディック”が目に入る。
その魅力に吸い寄せられた誠、するとそれは誠の体内に入り込み、突如として不思議な力に目覚めてしまうのだった…。
主人公の人物紹介
中村誠
主人公の中村誠は、中学の頃からの憧れである遥にも自分から想いを伝えることが出来ない、恋愛に奥手で引っ込み思案な性格。
ケンカも小学校時代を最後にご無沙汰な大人しい性格で、凡そ主人公らしくありません。
しかし、ヤるとき時はヤる性格で、作中冒頭では男らしい一面も発揮。
結果、そのことがヘラディックとの出会いに繋がり、透視能力や瞬間移動など、人智を越えた能力を手にすることになります。
しかし、これだけ特別な力が手に入れば、悪用してしまうのが人情ですが、根底にある男らしさと正義感が光る人物のため、力に溺れない点が好印象です。
ヘラディックによるサポートによって人生が激変し、遥を巡って度々ケンカに巻き込まれる悲劇の主人公でもあります。
登場人物紹介
ヘラディック
誠と運命的な出会いを果たし、超人的な力を与え、それまで平凡な高校生だった誠を変えてくれたヘラディックの存在が、まず第一に挙げられます。
地球外の“何か”で、思考や言動もAI的であるため、未知且つミステリアスな存在ですが、誠をサポートする良きパートナーな点が好感触で、機械的でもあるため誠に対して悪気も無く言いたいことをズバズバ言うところが面白いです。
こういう、「ありふれた日常」を変えてくれる存在に対する憧れを抱く人は、漫画ファンの中には多いはず。
そういう意味で、本作を読んだ色んな方の心にハマるキャラだと思います。
吉田俊
城北高校番格・吉田俊。
遥をゲットするためなら手段を選ばず、告白された誠に嫉妬し、今時他校に乱入するほど傍若無人な輩な彼。
いざ劣勢になると多勢でも引き、追い詰められると手下のヤンキー達を焚き付け、大挙として誠にけしかける卑劣漢でもあります。
しかし、能力に目覚めた誠にヤられ放しで、誠の引き立て役のような扱いの不憫さが可愛らしいです。
手に装着した指の先っぽが出る革のグローブがトレードマークで、ケンカのヤられっぷりと同様、妙に印象に残ります。
尾崎歓一
城南高校を仕切る、尾崎歓一。
見た目は某パンクバンドのベーシストのような髪型でかなり強そうですが、吉田と同様に完全に誠の引き立て役です。
ケンカで消耗した誠に、大勢で武器を持って襲いかかりますが、呆気なく返り討ち。
咄嗟に機転を利かした誠に、完膚無きまで叩きのめされる点でも吉田と共通しています。
遥を狙う恋のライバルの一人として登場すると思いきや、吉田を上回るほどの不憫な扱いをされているのがツボです。
山口遥
ヒロイン・山口遥。
本作を代表する紅一点である彼女は、性格に表裏が無く、ケンカを吹っ掛けられる誠を本気で心配するなど、見た目も性格も良い人物。
逆に誠もそんな彼女を守ろうと身体を張り、それが本作の核である「ヘラディックの能力」と「それを使いこなす誠」の存在を際立たせ、そういう意味では本作の重要な意味を成すキャラです。
表立った描写が少ない彼女ですが、「好きな人のためなら命懸けになることも厭わない」精神を持っている誠の魅力を、最大限にまで引き上げる相性の良さが良いですね。
漫画の見どころシーン
これがこの作品の全てを象徴し、そして始まりでもあり、好きな人のために集団による暴力にも一人きりでも抵抗する誠はモチロンカッコいいのですが、その後の川底のシーンがまるで誠とヘラディックがシンクロしているかのように幻想的なシーンが描かれているからです。
それまではパッとしない人生を歩んできた誠、しかしヘラディックと体内で融合することで“新しい何か”が始まるという、ドキドキ感が伝わる描写が良いですね。
漫画の注目ポイント
主観ではありますが、本作のメインは「誠と遥の恋愛」と言うより「誠とヘラディックの冒険」にあると感じます。
ヘラディックの目的は、誠を「世界に君臨」させることで、そのことがきっかけとなり特に目立つことの無かった誠の人生が劇的に変わりました。
それは人格・行動にも及び、地球上に存在するあらゆる石が自身に力を与えることを知った誠は、自分の意思で石探しの旅に出て「強くなりたい」と感じるようになったのです。
それは紛れもなく成長であり、体内を通じてお互いがコネクトし合うという、普通の恋人同士よりもタイトな関係で、本作の肝でもあります。
ヘラディックの存在のみならず、誠の成長には遥の存在も重要な意味を成し、この奇妙な“三角関係”が見所でもあり、本作のキャラ同士の関係性で好きな部分です。